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秋の通潤橋と傍の「旧矢部町の平行三棟づくり民家」
通潤橋は阿蘇外輪山の南西側に広がるすそ野にある、江戸時代に造られたアーチ型の大きな石橋です。水源に乏しい白糸台地へ、谷をはさんで水を送るために架けられた石組みの通水橋・・・。単一のアーチ型で、全長が約80m、橋幅6.65m、橋高も20mをこす、日本最初の堂々とした噴水管(逆サイフォン)式の石橋です。文化史上、極めて重要な建造物として、国の重要文化財にも指定され、農林水産省の疏水百選に選定されています。
この通潤橋の特長は、人を渡す橋ではなくて、水を渡す水路橋であることです。橋の上には、石造の通水管が3列並んで・・・、これらの連通管によって、対岸へ水を・・・。緑川の支流が流れる谷をはさんで、取水口よりも水の出口である吹上口が、約6m低くなるように造られているとのこと。しかも肥後熊本の石工の高い技術と近隣の農民による無料奉仕で実現した橋・・・。その願いがひしひしと伝わってくると同時に、その壮麗な姿・・・、しかも正午には橋の中央から両側に放水され、水のアーチを描きます。
今回訪れたのは9月下旬。棚田は黄色に色づいた稲穂が光り、あぜ道には赤いヒガンバナが列をつくって、鮮やかに輝いていました。そして、時たま秋風に揺れていました。やがて、待ちに待った正午・・・。古い石橋から放水が始まり、冷たくて小さな飛沫が風を呼び、稲穂もヒガンバナも新たな精気をえたように揺れ、色つやも増したようでした。
放水を見届けてから、すぐ近くに建つ「平行三棟づくり民家」に入りました。旧矢部町民俗資料館になっていて、昔の暮らしを支え続けた農業や林業の多くの器具類が、展示されています。祖父母や父母の時代が帰ってきたようで、懐かしい思い出の波に浸りました。
昔から春夏秋冬、近郊の四季の暮らしを支えてきた通潤橋・・・。この石橋を造った布田 保之助氏の偉大さと地元民の活力に、、私自身も励まされました。(潮 信輔)
- 登録日
- 2011年09月30日
- 更新日
- 2016年09月23日 14時 13分