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夏・緑陰期の豊後「富貴寺」
国東半島は両子山あたりから八方に流れる尾根が山有り谷有りの急峻な地形を産み出すため、古くから日本古来の山岳信仰の霊地、修行の場として知られてきました。そして奈良時代末〜平安時代に入ると、次第に寺院の形態を取り始め、仏教文化とくに天台系の密教が栄えてきました。富貴寺(ふきじ)はその一つで、大分県豊後高田市にある天台宗の寺院で、山号は蓮華山。その後、戦乱と栄枯盛衰が繰り返されましたが、12世紀の建築と考えられている富貴寺の大堂は、難をまぬがれて、平安期の阿弥陀堂の姿を今に伝えています。
大堂(阿弥陀堂)は、京都の平等院の鳳凰堂、岩手の中尊寺の金色堂と並ぶ日本三大阿弥陀堂に数えられています。九州最古の木造建築で、国宝に指定されています。
急な石段をあがり、緑の森で囲まれた小高い平地に踏み込むと、すぐ前にこのお堂が見えてきます。小規模な建築で扉など、後世の修理が加わった部分もありますが、九州に残る和様の平安建築として、歴史的価値が高く、屋根は宝形造(ピラミッド状の屋根形態)で、「行基葺き」と呼ばれる瓦葺き。お堂は正面の柱の間が3間、側面が4間で、正面幅よりも奥行が長いとのこと。
また富貴寺には、素朴な仁王門、梵字が刻みつけられた鎌倉時代の石塔、室町時代の国東塔や小さな石仏、石殿、板碑などが、歴史を語っています。そして四季の変化は、歴史の重みを受け継いで、富貴寺をより濃く彩ります。
夏、富貴寺と周辺の森は、緑一色に包まれます。淡い黄緑色のウバユリ、5つの手のひらの様な葉を多く付けたカエデが・・・、風に揺れては蝉の声に調和します。また本堂の庭、土塀のそばでは、ピンク色のハス、オレンジ色のコオニユリなどが咲き、緑に包まれては、彩りを鮮やかにしていました。(潮 信輔)
- 登録日
- 2013年03月03日
- 更新日
- 2017年07月17日 17時 09分