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言葉に紡ぐ、癒しの情景
昔から日本人は、花鳥風月に関したことに、心を引かれて来ました。とくに、時の流れに敏感で、その中でも季節、年月の移ろい、日々や時間のさかいめに、また、あいまいなことに、風情と余韻を感じてきたようです。そこには、日本に特有な文化が息づいています。
〜木漏れ日 そよ風 夕映え 朝霧 夕霧 さざ波 夕月 五月雨 夕暮れ 雨だれ せせらぎ〜
など特に四文字からなる言葉に風情と余韻を感じます。 私たちはなぜ、これらの言葉に
「癒し」や「憩い」を感じるのでしょうか?
「癒し」や「憩い」を感じるのでしょうか?
四文字における「癒し・憩い」言葉の医学的な考察
先に述べたように四文字からなる言葉を聞いて、なぜ「癒し」や「憩い」を感じるのか、医学的な見方から以下のように考えました。-
生理的な呼吸の瞬間に適合している。
「こもれび(木漏れ日)、そよかぜ(そよ風)、ゆうばえ(夕映え)、さざなみ(さざ波)、あまだれ(雨だれ)、せせらぎ、こがらし、さみだれ」などの言葉は、いずれも四つの文字から成りたっています。これは人が呼吸時に、息を吸って吐く時間に最も適しているためと考えられます。すなわち、四文字を発声するリズムが、生理的に安定しているためと思われます。
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一文字の濁音をもっていて、余韻を与える。
また、これらの言葉には、濁音を一つもっています。濁音のほうが余韻を感じるためではないでしょうか?。 たとえば西洋の鐘は清音でカーン、カーンと鳴ります。一方、東洋の鐘(梵鐘)はゴーン〜、と全身にしみわたります。濁音のほうが五感に感じ、余韻をもって響き渡ります。また 和太鼓のほうが西洋の太鼓に比べて、低い音で余韻とともに五感に響きます。こもれび(木漏れ日)、そよかぜ(そよ風)、ゆうばえ(夕映え)、さざなみ(さざ波)、などが、濁音を一文字もっているので、余韻があり風情を感じるのではないでしょうか?
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自然現象で季節の変わり目、朝夕など時間の移ろいを表している。
これらの言葉には、移り変わりやすい時間の流れを感じさせます。また、はかなさ、かよわさ、淡いものやつつしみ深さ、よろこびなどを感じさせます。「こがらし」や「さみだれ」は1年の間での季節の移り変わりを、「あけぼの、あさぎり、ゆうばえ、ゆうなぎ」などは、1日での明暗の時間が流れゆくさまを示しています。
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淡く、かすかで、ひかえめな言葉が多い。
「そよかぜ、さざなみ、こもれび」などは、かすかで淡く、ひかえめであいまいなものです。そこには余情を共感するという、わが国に特有な文化が息づき、その余韻は脈々と流れているように感じられます。
童謡にみる癒しの情景
有名な童謡である“夕焼けこやけ”で、「夕焼けこやけで日が暮れて、山のお寺の鐘がなる。おぉててつないで皆かえろ、カラスと一緒に帰りましょ」を聞くと、人は夕映えのなか、煙たなびく山里やほんのりと赤い山際をみて、寺院の梵鐘のゴーンと響き渡る音を聞きながら、家族のことを考え、時間や自然の移り変わりを感じるのではないでしょうか?