名所旧跡:No.125 別府湯の花小屋 (先代の叡知)
「別府湯の花小屋」の動画
別府八湯の一つ、明礬温泉。そこには湯の花を採る「湯の花小屋」や、そこかしこの岩間から湯煙が立ち上っています。明礬地区は相当な地熱地帯で、地下30cmあたりに温泉脈があるそうです。
ここ明礬温泉は、名前のごとくミョウバン(温泉成分の結晶)採取が江戸時代から行われており、当時から質・量とも全国一になり、採取事業の隆盛とともに湯治場として発展した温泉地です。
ミョウバンは、天然の活発な噴気を利用して作られる天然の入浴剤で、染料や医薬品に使われています。
この湯の花の採取方法を江戸時代から今まで約280年もの間、変わらぬ製法でずっと生産し続けていて、湯の花小屋で生産されるこの製法は世界唯一のもので、他で生産される硫黄華とは根本的に品質が異なるそうです。また、別府市無形文化財にも指定されています。
見学は無料で、小屋の小窓から中の様子を見ることができます。そこには小さな白い結晶がキラキラと輝いていますよ。
江戸時代から続くミョウバンの伝統的採取法
まず噴気の多い場所が選び、温泉ガスが均等に小屋内で噴出できるよう栗石で石畳みを作ります。そしてこの地特有の青粘土を敷き詰め、その上に三角屋根のわら葺き小屋を建設します。
地下のガスの蒸気が栗石のすき間から青粘土の中に入り、ガス中の成分と青粘土の成分が結晶。この結晶が湯の花で、1日約1mmずつ成長し、約2ヶ月かけて採取・精製・乾燥して製品化されます。
縄文時代の住居のようにも見える湯の花小屋は、小屋の内部の温度を一定に保ち、蒸気中の水分をわら屋根が屋外へと放出させます。雨漏りの心配もないそうです。
しかし職人が苦労して作った小屋も、蒸気の作用で寿命は長くて3年。そのたびに葺き替えられるそうです。
昔の人々の深い経験と知恵から生まれた湯の花小屋は、江戸時代の“近代的化学工場”と言えるでしょう。
名 称/別府湯の花小屋(べっぷゆのはなごや)
所在地/大分県別府市明礬・明礬温泉